黒板のカメラ撮影を学校にお願いして、授業中にノートを出さないようにして、ようやく息子は
「ただいま!」
と、元気よく笑顔で帰ってきた。
見ただけで、疲れ具合が違うし、表情が明るかった。
「あのね、書かなかったの。ちゃんとしたよ」
と、ニコニコと報告を受けて、安堵した。
カメラをチェックすると、黒板だけが写っている。クラスメイトの姿はない。
「よく撮れてるね、じゃあちょっと復習しようか」
と、カメラを見せると、息子はガーンとショックを受けた顔をした。
カメラを見て、私を見て、
「読まなきゃダメなの…?」
と、絶望した表情をした。
ここで気が付いた。
カメラで黒板を撮影しても、写真にある黒板の字が読めないのだ。
教科書でも、ノートでも、カメラの画像でも、媒体はなんでも、文字は文字で、文章は文章で、「読む苦手」が減るわけではなかった。
ノートはとらなくて良くなったから「書く苦手」が減っただけだった。
どうしよう…と悩んだ。
これだけ、いろいろ便宜をはかってもらって
「カメラ撮影したけれど、写真の字を読めません」
と、学校に相談したところで、なにかいいアイディアが出てくるとも思えなかった。
息子は今までよりも、ずっとずっと明るい表情をしている。
しばらく、様子をみよう、学校へは特に相談しないようにしよう、と決めた。